権利の保証と、第三者の権利侵害への対応

保証は「何を、いつの時点で」、侵害対応は「誰が、どこまで動けるか」を契約に書いておくと、問題が起きたときに迷いません。

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「第三者の権利を侵害しないことを保証する」の一文だけでは、相手が加えた改変の責任まで負うことになりかねません。

このページの要点

  • 保証は、権利者であること、権利に負担がないこと、第三者の権利を侵害しないこと、に分け、時点を書く。
  • 補償は、通知、防御の主導、和解の同意、費用、上限を一続きで書く。保証の範囲は、提供した内容と利用に分ける。
  • 差止請求(112条)を持つ者として条文が挙げるのは権利者側で、許諾を受けただけの者は挙がっていない。侵害対応の分担を契約で決める。
  • 損害額の推定(114条)や賠償額の予定(民法420条)を踏まえ、賠償の範囲と上限、故意・重大な過失の扱いを決める。

結論:保証は「何を・いつの時点で」、侵害対応は「誰が・どこまで動けるか」を書く

出版やライセンスの契約には、ほぼ必ず「権利の保証」の条項があります。許諾する側が、自分がその作品の権利者であり、第三者の権利を侵害していないことを約束する条項です。この条項が漠然としていると、後で第三者から苦情が来たときに、誰が何をどこまで負担するのかが決まらず、当事者の間で責任の押し付け合いになります。侵害されたときの対応も同様で、権利を侵害されている作品を見つけたとき、許諾を受けた側が自分で動いてよいのか、許諾する側が動くのか、費用は誰が持つのかが、契約に書かれていないことがよくあります。

このページでは、権利の保証と、第三者との間で侵害が問題になったときの対応を、契約の条項として整理します。先に結論を4点にまとめます。

  1. 保証は、権利者であること、権利に負担がないこと、第三者の権利を侵害しないこと、の3つに分け、時点を書く。締結時点だけか、契約期間中ずっとか、で効果が大きく違います。
  2. 第三者の権利を侵害していた場合の責任の主体と費用を、あらかじめ決める。通知、防御の主導権、和解の同意、賠償の上限をセットで書くと、揉めにくくなります。
  3. 侵害を見つけたときの動き方を、通知、協力、単独で動ける範囲に分けて書く。著作権法が差止めを請求できる者として挙げているのは権利者側であり、利用の許諾を受けた者は条文に出てきません。
  4. 損害額の考え方(著作権法112条から114条)と、民法415条・420条の関係を理解したうえで、賠償の範囲と上限を決める。

許諾の種類(出版権、独占的な許諾、非独占の許諾、譲渡)によって、保証と侵害対応の組み立ては変わります。種類の選び方は契約の選び方、出版権者の立場は出版権の設定で扱っています。契約が終わったときの権利の戻し方は終了・絶版・権利の戻し方に整理しました。ここでは、保証と侵害対応の条項に絞ります。なお、訴訟の代理や和解交渉の実務そのものは扱わず、契約書にどう定めておくかの範囲にとどめます。

権利者であることの保証:何を保証させ、何を保証させないか

許諾する側の保証は、一般に次の3つに分けて書きます。

権利の保証の3つの型

型保証する内容書き方の注意
権利者であること作品について、許諾する権限を有していること。共同で作った作品や、他人の素材を含む作品では、全員の同意や素材の権利処理が済んでいること。共同著作物や、他人の文章・写真・図版を含む作品は、保証の例外として整理する。例外を書かないと、保証違反になりやすい。
権利に負担がないこと質権などの担保が設定されていない。他の相手への許諾(特に独占の許諾)と矛盾しない。著作権に質権が設定されているときは、出版権の設定にも質権者の承諾が必要になる(79条2項)。
第三者の権利を侵害しないこと作品の内容や利用が、他人の著作権、名誉、プライバシー、肖像などを侵害しない。作品の内容が自分の創作でも、利用の態様(相手が加えた改変や追加)で侵害が生じることがあるため、保証の範囲を切り分ける。

ポイントは3つあります。

  1. 保証の時点。「本契約の締結時点において」と書くのか、「本契約の有効期間を通じて」と書くのかで、保証違反が成立する時期が変わります。権利関係が期間中に変わり得る契約(質権の設定、権利の譲渡など)では、期間中の保証に、変更時の通知義務を加えるのが一般的です。
  2. 保証の範囲を作品の「内容」と「利用」に分ける。許諾する側が責任を負えるのは、自分が提供した作品の内容までです。相手が自分の判断で加えた改変、挿入した素材、追加した表現は、相手が責任を負う、と書き分けます。
  3. 保証できない部分は、保証しないと明記する。作品が第三者の権利を侵害しているかどうかは、客観的に完全に確かめられるとは限りません。「知る限り」「知り得る限り」のような限定が必要な場合は、その旨を書き、限定のない保証と区別します。

書き方の例(一般的な例) 保証条項の書き方

保証の内容

よくある書き方甲は、本著作物が第三者の権利を侵害するものでないことを保証する。
整えた書き方甲は、本契約の締結時点において、(1)本著作物の著作権者であり、本契約に定める許諾をする権限を有すること、(2)本著作物に質権その他の負担が設定されていないこと、(3)甲が乙に提供する本著作物の内容が、第三者の著作権その他の権利を侵害しないことを、表明し、保証する。

理由一文の保証は、何を保証したのかが読み取れない。3つに分けると、違反したときに、どの項目に違反したのかを特定できる。

保証の限定

よくある書き方甲は、いかなる場合も、本著作物が第三者の権利を侵害しないことを保証する。
整えた書き方前項の保証は、甲が乙に提供した本著作物の内容に限る。乙が本著作物に加えた改変、追加した素材または表現については、乙が責任を負う。

理由相手が手を加えた部分まで保証すると、許諾する側が負う責任が際限なく広がる。内容と利用で線を引く。

時点

よくある書き方甲は、本著作物の権利について、一切の問題がないことを保証する。
整えた書き方甲は、本契約の有効期間中、第1項の保証が事実に反する事情が生じたときは、速やかに乙に通知する。

理由保証の時点を締結時にとどめ、期間中の変化は通知義務で補うと、実際に守れる条項になる。

第三者の権利侵害が問題になったとき:責任の主体と費用、補償の手続

保証は、約束です。約束が事実に反して、第三者から権利侵害の主張が出たとき、実際に動くのは、責任の主体、費用の負担、手続の3つです。契約書の中で、これらを一つの流れとして書いておくと、慌てずに済みます。

第三者から主張を受けたとき、民法が前提としているのは、債務不履行の責任です。債務者が債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は損害賠償を請求できます(民法415条1項)。ただし、債務の不履行が、契約その他の債務の発生原因と取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、責任を負いません(同項ただし書)。保証違反で責任を問う場合、許諾する側の落ち度を問うのか、結果として保証が事実に反していたことを問うのか、が重要な分かれ目になります。契約に「保証違反があったときは、過失の有無にかかわらず補償する」と書けば、落ち度を問わない責任になります。

契約実務では、この責任を「補償(ほしょう)」の条項として書くことが多くあります。補償とは、第三者から請求を受けた側が被った損害や費用を、保証違反をした側が引き受ける約束です。補償の手続は、次の流れで書くのが一般的です。

補償の手続の流れ

  1. 通知第三者から主張や請求を受けた側が、直ちに相手に通知する。
  2. 防御の主導補償する側が、自分の費用で防御・対応を主導する。受けた側は協力する。
  3. 和解の同意和解や譲歩は、相手の同意を得て行う。同意なしの和解は補償の対象から外す。
  4. 費用と賠償対応にかかった合理的な費用と、確定した賠償額を、補償する側が負担する。
  5. 上限と除外補償の上限額と、故意・重大な過失など上限の外に置く場合を決める。

通知が遅れて対応できなかったときの責任、補償の対象に弁護士費用を含めるかどうか、補償の期間(契約終了後も続くか)も、あらかじめ決めておくと迷いません。

補償の条項で、見落とされやすいのは、「防御の主導権」です。第三者から請求を受けた側が、補償してもらえるからといって、勝手に交渉や和解を進めると、補償する側が納得できない条件が決まってしまいます。補償する側が主導する代わりに、受けた側の同意なしに、受けた側の義務を増やす和解はしない、という釣り合いを書くのが一般的です。

条文例補償についての書き方の例

  1. 乙は、本著作物の利用に関して、第三者から権利侵害その他の請求、異議または行政上の指導(以下「請求等」という。)を受けたときは、直ちに甲に通知する。
  2. 前項の請求等の原因が、甲が表明し保証した事項の違反にあるときは、甲は、自己の責任と費用により、これを解決する。乙は、甲の求めに応じて、必要な協力をする。
  3. 甲は、前項の請求等により乙に生じた合理的な範囲の損害および費用を、乙に補償する。ただし、請求等の原因が、乙による改変、乙が追加した素材または表現、または本契約に定めのない方法による利用にあるときは、この限りでない。
  4. 乙は、甲の事前の同意なく、前項の請求等について、和解、譲歩または債務の承認をしてはならない。

第3項ただし書は、保証の範囲を「内容」と「利用」に分けた考え方に対応しています。第4項がないと、補償する側の知らないところで和解が成立するおそれがあります。

侵害を見つけたとき:通知・協力・単独で動ける範囲の決め方

前の章は、自分の側が責められる場面でした。この章は逆に、自分の作品が第三者に無断で使われているのを見つけた場面です。許諾する側が見つけることもあれば、許諾を受けた側が見つけることもあります。

ここで最初に確認したいのは、著作権法が侵害に対して誰に何を認めているかです。差止請求権(著作権法112条1項)を持つのは、条文上、著作者、著作権者、出版権者、実演家、著作隣接権者です。侵害する者、または侵害するおそれがある者に対して、その侵害の停止または予防を請求できます。また、侵害行為を組成した物や、侵害行為によって作成された物の廃棄などの必要な措置も請求できます(同条2項)。この条文には、利用の許諾を受けただけの者は挙がっていません。したがって、非独占の許諾を受けた側や、独占的な許諾を受けた側が、第三者の侵害に対してどこまで自分の名で動けるかは、契約の定めと実際の事情に左右されます。出版権者は、条文上、差止請求権を持つ者として挙がっています。

そのため、契約書の中で、侵害を見つけたときの動き方を決めておく意味があります。決める項目は、次の5つです。

確認の問いと理由侵害発見時の条項で決める問い

  1. 見つけた側は、いつまでに、誰に通知するか。

    通知が遅れると、被害が広がり、証拠が失われます。発見後直ちに、書面または電磁的方法で通知する旨を置きます。

  2. 誰が相手方に警告・請求を行うか。

    権利者が行うのが原則です。許諾を受けた側が行うことを認めるなら、その範囲(警告文の送付まで、など)を決めます。

  3. 許諾を受けた側が単独で動いてよい範囲はどこまでか。

    独占的な許諾や出版権では、利用の実態を最もよく把握しているのは許諾を受けた側です。通知や証拠の収集は許諾を受けた側が行い、請求は権利者が行う、という分担を書くことがあります。

  4. 権利者が動かないときは、どうなるか。

    一定の期間内に権利者が対応しないとき、許諾を受けた側が、自分の費用で必要な措置を取れる、あるいは、権利者に措置を取ることを求められる、と書くことがあります。

  5. 回収した賠償金や和解金を、どう分けるか。

    分けない場合は、費用を出した側に帰属するのか、権利者に帰属するのかが、争いになります。費用の分担と、回収金の配分を合わせて決めます。

5つの問いに答えを決めておけば、実際に侵害を見つけたとき、条項を読むだけで次の一手が分かる状態になります。

契約書の書き方の方向は、「発見したら通知する」「権利者が動く」「許諾を受けた側は協力する」「費用と回収金は事前に決めた割合で分ける」が基本です。許諾を受けた側が単独で動ける範囲を広げたい場合(独占的な許諾など)は、その分、権利者が負う負担が軽くなるため、対価や保証の水準に影響することがあります。

差止請求と損害額の推定(著作権法112条〜114条)の仕組み

侵害対応の条項を書くときは、法律がどのような救済を用意しているかを知っておくと、契約で何を補うべきかが見えてきます。著作権法の救済の要点を、表に整理します。

著作権法が用意している主な救済

条文内容契約で補っておくこと
112条1項侵害する者、または侵害するおそれがある者に対する、侵害の停止または予防の請求。誰が請求するか、いつまでに請求するか、請求の前に通知するか。
112条2項侵害の行為を組成した物、侵害の行為によって作成された物、専ら侵害の行為に供された機械または器具の廃棄など、必要な措置の請求。在庫や公開中のデータの廃棄を、契約終了時の義務として定める。
113条侵害品を情を知って頒布する行為などを、侵害とみなす。流通経路に侵害品が入ったときの回収の協力。
114条1項侵害者が侵害作成物を譲渡等したときの、譲渡等数量に権利者の単位数量当たりの利益額を乗じた額などを、損害の額とできる。商品化では数量の報告と帳簿の閲覧(損害の算定の資料になる)。
114条2項侵害者が侵害行為により受けた利益の額は、権利者が受けた損害の額と推定される。利益の算定に使う資料を提供する協力義務。
114条3項権利の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(使用料相当額)を、損害の額として請求できる。許諾料の定めがあると、その額が使用料相当額の判断の手掛かりになり得る。
114条の5損害が生じたことが認められる場合で、損害額の立証が極めて困難なときは、裁判所が相当な損害額を認定できる。帳簿・記録を残す義務を定め、立証を支える。

これらの条文のうち、114条1項から3項は、請求できる者として、著作権者や出版権者を挙げています(1項は「著作権者等」。2項・3項は著作権者、出版権者または著作隣接権者)。差止めと同様に、許諾を受けただけの者は、条文上の主体に挙がっていません。そのため、許諾を受けた側が侵害によって損害を受けた場合の扱いは、契約でどのように権利者が動くかを決めておくことで補う必要があります。

契約書の中で、特に価値があるのは、記録を残す義務と、情報を共有する義務です。侵害による損害額を計算するには、数量、販売額、利益、使用料の水準といった資料が必要になります。許諾を受けた側が、販売数量や売上の記録を保存し、必要に応じて権利者に提供する義務を負っていれば、侵害があったときの算定を支える資料になります。許諾料の報告・帳簿・閲覧の定めは、許諾料と報告のページで詳しく扱います。

契約上の損害賠償額の予定との関係も押さえておきます。当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ(民法420条1項)、賠償額の予定は、履行の請求または解除権の行使を妨げません(同条2項)。違約金は、賠償額の予定と推定されます(同条3項)。たとえば、「範囲外の利用があったときは、通常の許諾料の一定倍数を違約金とする」と定めると、侵害による損害額を個別に立証する手間が省ける一方、予定した額が適正かどうかが争いになることもあります。予定額を定めるなら、許諾の範囲外の利用に限る、個別の損害が上回るときはその差額を請求できるかどうかも併せて書く、といった整理が必要です。

責任の範囲と上限:民法415条・420条を踏まえた条項の組み立て

保証違反や侵害の責任は、無制限に負わせると、許諾する側にも許諾を受ける側にも重すぎる結果になります。そこで、責任の範囲を、契約で整えます。

  • 賠償の範囲。直接かつ通常の損害に限るのか、逸失利益や弁護士費用などを含めるのかを決める。間接的に生じた損害や、特別の事情による損害まで含めると、責任の範囲が見通せなくなります。
  • 賠償の上限。許諾料や支払済みの対価の一定期間分を上限とする例があります。ただし、故意や重大な過失がある場合は、上限の外に置くのが一般的です。
  • 免責の事由。天災地変、法令の改廃、通信回線の障害など、当事者の合理的支配を超える事由による履行の遅れは、責任を負わない旨を置きます。金銭債務は免責の対象から外すのが一般的です。
  • 責任の期間。補償や保証の責任が、契約終了後も続くのか、一定の期間に限るのかを決める。

書き方の例(一般的な例) 責任の範囲の書き方

賠償の範囲

よくある書き方違反した者は、相手方に生じた一切の損害を賠償する。
整えた書き方違反した者は、相手方に生じた直接かつ通常の損害を賠償する。相手方に故意または重大な過失があるときは、特別の事情によって生じた損害にも及ぶ。

理由「一切の損害」は、見通しのつかない責任を負わせる書き方になる。範囲の線を引いて、予測できる責任にする。

違約金

よくある書き方範囲外の利用があったときは、通常の許諾料の一定倍数を、違約金として支払う。
整えた書き方範囲外の利用があったときは、通常の許諾料の一定倍数を、損害賠償の額の予定として支払う。ただし、実際の損害がこれを超えるときは、超える額を請求できる。

理由違約金は賠償額の予定と推定される(民法420条3項)。実際の損害が上回る場合の扱いを書いておくと、権利者側が不足を請求できるかが明確になる。

上限

よくある書き方責任の上限は設けない。
整えた書き方賠償の総額は、本契約に基づき受領した対価の総額を上限とする。ただし、故意または重大な過失、第三者の権利侵害に関する補償、秘密保持義務違反には、この上限を適用しない。

理由上限があれば保険や引当ての見通しが立つ。ただし、侵害の補償まで上限の内に置くと、保証の実効性が下がるため、外に置く例が多い。

損害賠償の責任に関して、民法415条の枠組みと、契約の定めがどう関わるかも整理しておきます。民法415条は、債務の不履行があったときの損害賠償の原則を定めています。契約で「責任を負わない」と定めたり、「過失の有無を問わず補償する」と定めたりすることで、この原則を調整できます。契約書は、法律の原則を前提に、当事者の力関係と取引の実情に合わせて、責任の分け方を決めるものです。許諾する側は責任を狭く、許諾を受ける側は責任を広く、と考えるのが自然ですが、両者の落としどころを探ることになります。

費用の分担と、起きがちなこと

侵害への対応には、調査の費用、通知の費用、手続にかかる費用など、さまざまな費用がかかります。誰がどの費用を負担するかを、あらかじめ決めておくと、実際に動くときに迷いません。

  • 調査費用。侵害の有無を確かめるための調査にかかる費用。発見した側が負担する例と、権利者が負担する例があります。
  • 警告・請求の費用。相手方に警告文を送るなどの費用。請求を行う者が負担するのが原則です。
  • 手続の費用。裁判所や関係機関を使う手続の費用。誰が当事者になるかで、負担者が変わります。
  • 回収金の配分。得られた賠償金や和解金から、まず費用を差し引くのか、費用と別に配分するのか、を決める。

最後に、署名前に確かめる項目と、起きがちなことをまとめます。

署名前に確かめる項目

  • 保証の内容が、権利者であること、権利に負担がないこと、第三者の権利を侵害しないこと、に分かれているか。
  • 保証の時点(締結時か、期間中か)が書かれ、期間中の変化は通知義務で補われているか。
  • 保証の範囲が、提供した内容に限られ、相手が加えた改変や追加が除かれているか。
  • 第三者から請求を受けたときの通知、防御の主導権、和解の同意、費用の負担が書かれているか。
  • 侵害を見つけたときの通知、協力、単独で動ける範囲、権利者が動かないときの扱いが書かれているか。
  • 回収金の配分と、費用の分担が書かれているか。
  • 賠償の範囲と上限が書かれ、故意・重大な過失や補償が上限の外に置かれているか。
  • 違約金の定めがあるときは、損害賠償額の予定であること、実際の損害が上回るときの扱いが書かれているか。

起きがちなこと

  • 「第三者の権利を侵害しないことを保証する」と一文で書いたため、相手が加えた改変による侵害まで、許諾する側が責任を問われる。
  • 権利に質権が設定されていることを知らないまま、出版権を設定し、後で質権者の承諾がなかったことが問題になる。
  • 侵害を見つけた許諾を受けた側が、権利者に連絡しないまま警告文を送り、相手方との関係が悪化する。
  • 侵害の対応を誰がするかが決まっておらず、発見から対応までに時間がかかり、被害が拡大する。
  • 補償の条項に防御の主導権の定めがなく、第三者との間で、補償する側の知らないうちに和解が成立する。
  • 賠償の上限を設けなかったために、一度の請求が事業の規模を超える額になる。
  • 違約金の定めがあるのに、実際の損害が上回る場合の扱いが書かれておらず、不足分の請求ができるかが争いになる。

よくあるご質問

表明保証と、通常の保証では、何が違いますか。

法律上の区別というより、契約実務での書き方の違いです。表明保証は、契約の締結時点などで、一定の事実が真実であることを表明し、それが事実に反していたときに責任を負う、という書き方です。保証の条項に時点と事項を特定して書くことで、何に違反したのかを特定できます。契約の相手に、どの事実を前提に取引を進めるかを、あらかじめ明らかにしてもらう意味があります。

第三者から、作品が権利侵害だと言われたとき、まず何をしますか。

契約に通知の条項があれば、それに従い、相手方に直ちに通知します。次に、主張の内容、相手方の根拠、問題となっている部分を整理し、補償や協力の条項に従って、対応の主導権をどちらが持つかを確認します。相手方の同意なく、和解や債務の承認をすることは、補償の対象外になるおそれがあるため、慎重に扱います。

独占的な許諾を受けた側は、第三者の侵害に対して、自分で差止めを請求できますか。

著作権法112条1項が差止請求権を認めている者は、著作者、著作権者、出版権者、実演家、著作隣接権者であり、利用の許諾を受けただけの者は条文に挙がっていません。出版権者は、挙げられています。許諾を受けた側が自分の名で動けるかどうかは、契約の定めと個別の事情によって左右されるため、契約書に、侵害対応の分担を書いておくことが重要です。

損害賠償の額は、どのように考えますか。

著作権法には、損害額を推定したり、算定の手掛かりを示したりする規定があります。侵害者が受けた利益の額を損害額と推定する規定(114条2項)、権利の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として請求できる規定(同条3項)などです。損害額の立証が極めて困難なときは、裁判所が相当な損害額を認定できます(114条の5)。契約で違約金を定めるときは、民法420条により、賠償額の予定と推定されます。

責任に上限を設けることはできますか。

契約で定めることができます。直接かつ通常の損害に限る、受領した対価の総額を上限とする、といった例があります。ただし、故意や重大な過失がある場合、第三者の権利侵害に関する補償、秘密保持義務の違反などは、上限の外に置くのが一般的です。上限の定めが、一方の当事者だけに有利になっていないか、署名前に確認します。

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