契約の終了・絶版・権利の戻し方

契約が終わっても、在庫、電子版、素材は残ります。終わらせる手順は、始める前に決めておきます。

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出版権の存続期間を決めなかった契約は、最初の出版から3年で出版権が消えます。更新を話し合う前に、期限が来ることがあります。

このページの要点

  • 自動更新は、更新を止める通知の期限、方法、到達の基準を書く。期間を決めない出版権は、最初の出版行為等から3年で消える(83条)。
  • 出版権の消滅請求(84条)は三つの型。最初の出版の義務違反は通知のみ、継続出版の義務違反は3か月以上の催告が要る。設定行為で別段の定めができる(81条)。
  • 終了後の在庫は、販売期間を区切り、対価の支払いと報告を条件にし、新規の製造・配信を止める。電子版は、送信の停止と購入済みの読者へのサポートを分ける。
  • 素材・データは、対象、期限、廃棄の証明を決める。出版権の消滅は登録しないと第三者に対抗できない(88条)ため、抹消の協力も書く。

結論:契約の終わらせ方は、始める前に「通知・在庫・電子版・素材・存続」の5つで決めておく

出版や商品化、翻訳、映像化の契約は、結ぶときに力が入り、終わるときのことは「別途協議」のひと言で済まされがちです。ところが、実際に揉めるのは終わらせるときです。更新を止めたいのに通知の期限が過ぎていた、絶版にしたいのに在庫がいつまでも売られている、電子版がまだ配信されている、渡した原稿や素材が返ってこない、といった場面です。権利を貸したり預けたりした側から見ると、契約が終わっても自分の作品が相手の手元に残り続ける状態は避けたいはずですし、借りた側からすると、終わった後に何をしてよいのか分からないままでは、在庫や読者への対応ができません。

このページでは、媒体を問わず、契約の終わり方で決めておく項目を整理します。先に結論を5点にまとめます。

  1. 自動更新は、更新を止める通知の期限と方法を決める。期限を過ぎると更新されてしまうため、いつまでに、誰に、どの方法で通知するかを具体的に書きます。
  2. 出版権は、法定の消滅請求(著作権法84条)の三つの型と、契約で上書きできる点を押さえる。義務違反の種類によって、催告が要るか要らないかが違います。
  3. 終了後の在庫は、販売できる期間と範囲を区切り、新規の製造・配信を止める。在庫の販売には、対価の支払いと報告を条件にするのが基本です。
  4. 電子版は、新規の送信を止める日と、すでに購入した読者へのサポートを分けて決める。
  5. 素材・データの返却と廃棄は、範囲と期限、完了の証明まで書く。終了後も続く条項(秘密、人格権、報告、支払など)を、一覧にして残します。

契約を選ぶ段階の考え方は契約の選び方で、出版権そのものの法定の内容は出版権の設定で取り上げています。終了のときに揉めやすい「許諾の範囲外の利用」への対応は、トラブルとよくある質問で順序を整理しました。商品化の在庫の数え方は数量と在庫が詳しく扱います。ここでは、それらをつなぐ「終わらせる」手順に絞ります。

自動更新と更新拒絶:通知の期限と方法をどう書くか

出版権の存続期間は、設定行為(契約)で定めるところによります(著作権法83条1項)。設定行為に期間の定めがないときは、設定後最初の出版行為等があった日から3年を経過した日に消滅します(同条2項)。ここでいう「出版行為等」とは、出版行為(紙の出版や、記録媒体に記録して頒布すること)または公衆送信行為(80条2項で定義されています)のことです。したがって、期間を定めなかった出版権は、最初に本が出た日、あるいは配信が始まった日から3年で自動的に終わります。更新するかどうかを決めていなければ、更新の話し合いをする前に出版権が消えることになります。

契約で期間を定めたうえで、期間満了後も継続する形にしたいときは、自動更新の条項を置きます。典型的な書き方は、「期間満了の一定の日数前までに、いずれの当事者からも更新しない旨の通知がないときは、同一の条件で一定期間更新する」というものです。自動更新の条項で、必ず書いておきたい点は次のとおりです。

  • 通知の期限。期間満了のどれくらい前までに通知するか。短すぎると、相手が代わりの出版社や事業者を探す時間がなく、長すぎると、状況の変化に対応できません。
  • 通知の方法。書面か、電子メールか。書面の場合、到達をもって有効とするのか、発信をもって有効とするのかも決めます。
  • 更新後の期間と条件。同じ条件で同じ長さ更新されるのか、更新の都度、条件を見直す機会を設けるのか。
  • 更新しない場合の移行。更新しなかったときに、在庫、電子版、素材がどう扱われるかは、後の章の終了処理に委ねる。

書き方の例(一般的な例) 更新の書き方

自動更新

よくある書き方本契約は、期間満了後も、特に申出のない限り、自動的に更新される。
整えた書き方本契約の期間は、締結日から一定期間とする。期間満了の一定の日数前までに、いずれの当事者からも書面(電磁的方法を含む。)による更新しない旨の通知がないときは、同一の条件で一定期間更新される。

理由「特に申出のない限り」では、誰がいつまでに申し出るのかが分からない。通知の主体、期限、方法を書けば、更新を止める手段が使える。

更新拒絶の通知

よくある書き方更新を希望しない当事者は、相手方に通知する。
整えた書き方更新しない旨の通知は、期間満了の日の一定の日数前までに相手方に到達しなければならない。到達の日は、書面の場合は配達記録のある日、電磁的方法の場合は送信の日とする。

理由到達の基準日を書いていないと、通知が間に合ったか争いになる。到達日の認定の方法まで決める。

更新時の見直し

よくある書き方更新後の条件は、従前のとおりとする。
整えた書き方更新後の条件は、従前のとおりとする。ただし、各当事者は、更新の日の前までに、許諾料その他の条件の見直しを申し入れることができ、当事者は誠実に協議する。

理由同じ条件で自動更新すると、長い契約の途中で状況が変わっても、条件を変える機会がない。見直しの申入れ権を残しておく。

出版権は、更新の合意があっても、期間が延びたことを登録しなければ、第三者には主張できません。出版権の設定、移転、変更、消滅は、登録しなければ第三者に対抗できないと定められているためです(88条1項1号。混同や複製権等の消滅によるものを除きます)。契約の終わりと更新は、登録の手続とセットで考えます。

出版義務違反による出版権の消滅請求:著作権法84条の三つの型

出版権者には、出版の義務があります(81条)。紙の出版を引き受けた出版権者(第一号出版権者)は、原稿などの原品の引渡し、または電磁的記録の提供を受けた日から6か月以内に出版行為を行う義務と、慣行に従い継続して出版行為を行う義務を負います。電子的な公衆送信を引き受けた出版権者(第二号出版権者)にも、同じ構造の義務があります。ただし、81条のただし書は、設定行為に別段の定めがある場合は、この限りでないとしています。つまり、6か月という期間や、継続して出版する義務の中身は、契約で別の定めをすることができる、という意味です。

この義務に違反したときに、複製権等保有者(著作者など、出版権を設定した側)が出版権を消滅させる手段が、84条です。84条には、3つの型があります。

出版権の消滅の請求(著作権法84条)の三つの型

型要件手続契約で補っておくこと
1項:最初の出版・公衆送信の義務違反原品等の引渡しなどを受けた日から6か月以内に出版行為(または公衆送信行為)を行う義務に違反した。出版権者に通知して、出版権を消滅させる。催告は条文上は要件になっていない。6か月の起算点(原稿の完成の基準)と、遅れる事情があるときの延長の方法。
2項:継続して出版する義務の違反慣行に従い継続して出版行為(または公衆送信行為)を行う義務に違反した。3か月以上の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行されないときに、出版権者に通知して消滅させる。「継続して」の中身(在庫切れ・品切れの目安、重版の判断基準)を数字や事実で書く。
3項:著作者の確信への不適合による廃絶複製権等保有者である著作者が、著作物の内容が自己の確信に適合しなくなった。出版行為等を廃絶するために、出版権者に通知して消滅させる。ただし、廃絶により出版権者に通常生ずべき損害をあらかじめ賠償しない場合は、この限りでない。賠償すべき損害の範囲と、賠償の時期の定め。

この表のうち、実務で最もよく問題になるのは、2項の「継続して出版する」義務です。「慣行に従い」という基準は、業界の慣行によって中身が変わり、紙の本の品切れが「継続して出版しない」状態に当たるのか、電子版が配信されていれば足りるのか、どの程度の期間配信が止まったら違反になるのか、といった点が曖昧になります。契約で、絶版(出版や配信を止めた状態)の定義、一定期間の在庫切れが続いたときの扱い、重版の判断の目安を書いておくと、消滅請求の要件が具体的になります。

また、出版権の消滅は、紙の出版権と電子の出版権とで、別々に生じます。84条は、「それぞれ第八十条第一項第一号又は第二号に掲げる権利に係る出版権を消滅させることができる」と書いています。紙の本が品切れでも、電子版が継続して配信されているなら、消滅するのは紙の出版権だけ、という整理になり得ます。紙と電子の出版権を同時に設定している契約では、どちらかが義務違反のとき、他方も道連れにして終了させたいのか、切り離して残すのかを、書いておく価値があります。

条文例絶版と契約終了についての書き方の例

  1. 乙は、本著作物の紙媒体による出版物について、在庫が一定の数量を下回り、かつ、重版の予定がない状態が一定の期間継続したときは、その旨を甲に通知する。
  2. 甲は、前項の通知を受けたとき、または前項の状態を知ったときは、乙に対し、相当の期間を定めて、重版または電子出版による継続的な提供を求めることができる。
  3. 乙が前項の期間内に重版または継続的な提供をしないときは、甲は、乙に通知して、本契約のうち当該媒体に係る部分を終了させ、出版権を消滅させることができる。
  4. 前項により出版権が消滅したときは、乙は、甲が出版権の消滅の登録を申請するために必要な協力をする。

この例は、84条2項の催告に代わる手続を、契約の中で具体化したものです。催告の期間は、条文では3か月以上とされているため、契約で短縮する場合は、条文との関係を確認します。

終了後の在庫・新規製造・新規配信:契約の種類別の整理

契約が終わったとき、手元に残るのは、在庫、公開中のデータ、これから作ろうとしていた製品です。これらを放置すると、許諾が終わったのに使われ続ける状態になります。許諾を受けた者が、許諾に係る利用方法と条件の範囲内でだけ著作物を利用できるのは、許諾が有効な間です(著作権法63条2項)。許諾が終われば、その範囲は消えるため、終了後の利用は、契約で特別に認めた範囲に限られます。

契約の種類別:終了後に決めておくこと

契約の種類在庫・既存の製品新規の製造・配信特に決めておくこと
出版(紙)一定期間、定価または定めた価格で販売することを認めるか。断裁・返品の扱い。重版を止める。在庫販売の期間、販売数の報告、在庫の買取り。
出版(電子)すでに配信された分は、購入者が利用できる状態を保つか。新規の送信を止める。配信停止の日、プラットフォームへの停止依頼、購入者のサポート。
商品化在庫を一定期間販売できるか。販売経路を限るか。新たな製造を止める。在庫の数量報告、検数用の証紙(製造数を数えるために商品に貼るシール)の返還、廃棄の方法。
翻訳・海外翻訳版の在庫と、海外での配信の終了日。新規の翻訳・制作を止める。翻訳成果物の権利、対価の存続、現地での販売の終了。
映像化公開済みの作品の配信・頒布を続けるか。新作・続編の制作を止める。既存作品の取扱い、配信の終了時期、クレジット。
写真・図版印刷物の在庫と、公開中のページを残すか。新たな掲載を止める。掲載の取下げの期限、データの削除。

在庫販売を認めるときは、次の3点を条件として書きます。

  1. 期間を区切る。「終了後も在庫がなくなるまで」では、在庫が無期限に残ります。「終了後一定の期間に限る」と書き、その期間内に売れ残った分は、廃棄または買取りとします。
  2. 対価の支払いを条件にする。在庫販売による売上にも、許諾料の支払い義務が続くことを書きます。報告と支払いは、通常の期間と同じ手順で行います。
  3. 販売の方法を限る。投げ売り、値引き販売、新規の販路への展開を禁止し、これまでの販売経路の範囲にとどめます。

契約終了時の処理の流れ

  1. 終了の通知終了事由が生じたことを、書面または電磁的方法で相手方に通知する。
  2. 新規の停止新規の製造・配信・掲載を止める。
  3. 在庫の確定終了日現在の在庫の数量を確定し、報告する。
  4. 在庫の処理一定期間の販売、買取り、または廃棄をする。
  5. 精算と報告最終の許諾料を精算し、報告書を提出する。
  6. 返却と廃棄素材・データを返却または廃棄し、完了を証明する。

商品化の契約では、終了時の在庫の数量を、製造数量の報告や証紙の残数と照らして確認します。数量と在庫の考え方は、商品化の数量と在庫のページで詳しく扱います。

書き方の例(一般的な例) 在庫の扱いの書き方

在庫販売の期間

よくある書き方乙は、本契約の終了後も、在庫に限り、販売することができる。
整えた書き方乙は、本契約の終了後一定の期間に限り、終了日現在の在庫を販売することができる。この期間の経過後に残った在庫は、乙の費用で廃棄し、廃棄の証明を甲に提出する。

理由期間を書かないと、在庫が無期限に販売され、許諾を受けた者が終わらせる動機を持たない。期間と廃棄を組にして書く。

終了後の対価

よくある書き方在庫の販売について、甲は乙に対し、本契約の条件を適用する。
整えた書き方在庫の販売による売上についても、第○条の許諾料を支払い、同条の報告を行う。報告は、販売が完了した日の属する期の末日から一定の期間内に行う。

理由終了後の販売に許諾料を払わなくてよいのか、払うならいつまでに報告するのかを、終了時の条項に直接書く。

電子版の送信停止と、購入済みの読者へのサポート

電子書籍や電子的な配信は、紙の本と違い、終了の仕方が単純ではありません。新規の販売を止めても、すでに購入した読者は、手元の端末やアカウントで読み続けるのが一般的です。この「新規の販売の停止」と「すでに購入した人へのサポート」は、別のものとして契約で扱います。

確認の問いと理由電子版の終了で決める問い

  1. 新規の送信(販売・配信)を止める日はいつか。

    契約の終了日そのものにするのか、プラットフォームへの停止依頼に必要な日数を見込んだ日にするのかを決めます。停止依頼から実際の停止までに時間がかかる事業者もあるため、猶予期間を置く例があります。

  2. すでに購入した読者が、読み続けられる状態を保つか。

    購入済みの読者に、これまでと同じ閲覧環境を提供し続ける責任を、誰が負うかを決めます。プラットフォーム側の仕組みで継続される場合は、その旨を確認します。

  3. 読者からの問い合わせは、誰が受け付けるか。

    契約が終わっても、読者からの問い合わせ、再ダウンロードの依頼、返金の申出は続きます。窓口を、出版権者に残すのか、権利者に移すのかを決めます。

  4. 定額読み放題などの配信サービスに登録している場合の扱いは。

    配信サービスへの登録は、別の契約で行われていることが多いため、サービス側の契約の終了手順と、本契約の終了日を合わせます。

  5. 電子版の再配信を、別の出版社が行うとき、データの引継ぎは。

    権利が戻った後、別の事業者が配信するときに、レビューや購入履歴をどう扱うかは、プラットフォームの運用によります。引継ぎに協力する義務を、契約に書く例があります。

この5つのうち、読者へのサポートは、権利者の評判にも関わります。終了後の問い合わせ窓口を決めておくと、読者が取り残されることを避けられます。

電子版を扱うページとして、媒体別の許諾があります。紙と電子を別の許諾として書き分けている契約は、終了の手順も媒体ごとに分けやすくなります。反対に、媒体を一括で渡している契約では、終了のときに、どの媒体の利用をいつ止めるのかが曖昧になりがちです。

データ・素材の返却と廃棄証明、権利の戻し方

契約の期間中に渡した、原稿、原画、写真、図版、データ、見本品は、契約が終わったら返却するのか、廃棄するのかを決めます。返却と廃棄の条項には、次の項目が必要です。

  • 対象。元のデータだけでなく、複製、バックアップ、加工後のデータ、そこから作られた派生物を含めるか。
  • 方法。返却するのか、削除・廃棄するのか。電磁的記録なら、削除の方法(復元できない形で消す、など)まで書く。
  • 期限。契約の終了から、どれくらいの日数以内に完了するか。
  • 証明。完了したことを、書面(電磁的方法を含む。)で報告し、必要に応じて廃棄の証明を提出する。
  • 例外。法令上の保存義務や、会計の記録として残す必要がある資料は、例外として残し、目的外に使わない旨を書く。

条文例返却・廃棄についての書き方の例

  1. 本契約が終了したときは、乙は、甲から提供を受けた原稿、図版、写真その他の資料およびその複製物(電磁的記録を含む。バックアップを含む。)を、終了の日から一定の日数以内に、甲に返却するか、甲の指示に従って廃棄しなければならない。
  2. 乙は、前項の返却または廃棄を完了したときは、速やかに、完了した旨を書面(電磁的方法を含む。)で甲に報告する。甲が求めたときは、乙は、廃棄の事実を証明する資料を提出する。
  3. 法令により保存が義務づけられている資料その他やむを得ない理由があるものは、前二項の対象から除く。この場合、乙は、当該資料を本契約の目的以外に使用してはならない。

提供素材の返却・廃棄については、ライセンサーの監修や承認の運用とも関わります。監修・承認の流れのページも参考になります。

解除によって契約が終わるときは、民法の原則も関わります。解除権を行使すると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負います(民法545条1項)。金銭を返還するときは、受領の時からの利息を付す必要があり(同条2項)、解除は損害賠償の請求を妨げません(同条4項)。ただし、出版や商品化のように、すでに作品が流通している契約では、「元の状態に戻す」ことが現実にはできません。そのため、契約で、何を返し、何を残し、何を廃棄するかを具体的に書く方が確実です。

出版権が消滅したときの「権利の戻し」では、2つの手続を区別します。1つは、権利が複製権等保有者に戻る効果で、出版権が消滅すれば、設定された専有の効力はなくなります。もう1つは、登録の抹消です。出版権の消滅は、登録しなければ第三者に対抗できません(88条1項1号)。出版権者が登録の抹消に協力する義務を、契約の終了の条項に入れておくと、権利を戻した側が、次の出版社や事業者と契約するときに、障害になりません。

なお、許諾を受けた者が持っていた利用権は、著作権が第三者に移っても新しい著作権者に対抗できる(63条の2)、という点も覚えておきます。権利を戻す前に、権利者が著作権を別の人に譲渡していた場合、その譲渡先に対しても許諾の効力が続くため、終了の手続は、新しい権利者に対しても行います。

終了後も続く条項(存続条項)の一覧と、署名前の確認、起きがちなこと

契約が終わっても効力が続く条項を、「存続条項」と呼びます。契約書の末尾に「本契約終了後も、性質上存続すべき条項は有効に存続する」とだけ書かれていることがありますが、どれが該当するかが曖昧になるため、条項の名前を挙げて書く方が確実です。

存続させる条項の例

条項存続させる理由存続の期間の考え方
秘密保持終了後も、開示された情報の漏えいを防ぐ。一定の期間、または情報が公知になるまで。
著作者人格権氏名表示、同一性保持などの配慮は、契約が終わっても著作者に残る。期間の定めなく存続させる。
報告・帳簿・監査終了後の在庫販売や、未精算の許諾料の確認に必要。最終の精算が完了してから一定の期間。
支払い未払いの許諾料、在庫販売分の許諾料。完済するまで。
保証・補償終了後に第三者から請求が来ることがある。一定の期間、または請求の可能性がなくなるまで。
返却・廃棄終了後の手続そのもの。手続の完了まで。
準拠法・管轄・解釈終了後の紛争にも適用される。期間の定めなく存続させる。

署名前に確かめる項目

  • 自動更新があるとき、更新を止める通知の期限、方法、到達の基準が書かれているか。
  • 出版権の存続期間が書かれているか(書かないと、最初の出版行為等から3年で消える)。
  • 出版義務の内容(6か月、継続出版)に別段の定めを置く場合、その中身と、消滅請求の手順が書かれているか。
  • 絶版の定義と、品切れが続いたときの扱いが書かれているか。
  • 終了後の在庫の販売期間、対価、報告、廃棄が書かれているか。
  • 電子版の送信停止の日と、購入済みの読者へのサポートが書かれているか。
  • 素材・データの返却・廃棄の対象、期限、証明が書かれているか。
  • 出版権の消滅の登録への協力が書かれているか。
  • 存続させる条項が、条項名で列挙されているか。

起きがちなこと

  • 更新しない旨の通知を、期限の翌日に送ってしまい、同じ条件でさらに一定期間契約が続く。
  • 出版権の存続期間を書かなかったため、最初の出版の日から3年で出版権が消え、更新の相談の前に期限が来る。
  • 品切れの状態が長く続いているのに、絶版の定義がなく、「継続して出版している」と主張され続ける。
  • 契約終了後も在庫の販売が続いていて、許諾料の報告がされない。
  • 電子版の配信が、終了後も続いており、プラットフォームへの停止依頼が出されていない。
  • 返却すべき素材が、制作会社やデザイナーの手元に残り続けているが、誰も把握していない。
  • 出版権が消滅したのに登録の抹消がされず、別の出版社と新たに契約するときに支障が出る。

よくあるご質問

出版権の期間を決めなかったら、いつ終わりますか。

設定行為に存続期間の定めがないときは、設定後最初の出版行為等(出版行為または公衆送信行為)があった日から3年を経過した日に消滅します(著作権法83条2項)。更新の仕組みを契約に書いていなければ、その日で出版権は終わります。続けるつもりなら、期間と更新の方法を書いておく必要があります。

出版社が本を出さないとき、契約を終わらせられますか。

出版権を設定していて、原稿などの引渡しを受けた日から6か月以内に出版行為を行う義務に違反したときは、複製権等保有者が出版権者に通知して、出版権を消滅させることができます(84条1項)。慣行に従い継続して出版する義務に違反したときは、3か月以上の期間を定めて履行を催告し、履行されなければ、通知して消滅させます(同条2項)。設定行為で別段の定めをしている場合は、その定めが優先します(81条ただし書)。

契約が終わったあと、在庫の本は売り続けてよいですか。

契約に定めがある範囲に限られます。許諾を受けた者が著作物を利用できるのは、許諾に係る利用方法と条件の範囲内です(63条2項)。契約の終了後に在庫を販売できるかどうか、できる期間、許諾料の支払い、廃棄の方法は、契約に書いておかないと、争いになりやすい部分です。

電子書籍を配信停止にしたら、すでに買った人は読めなくなりますか。

契約や、配信しているプラットフォームの仕組みによります。新規の販売を止めても、購入済みの読者は、引き続き読める運用が一般的ですが、プラットフォームによって扱いが異なります。契約では、新規の送信の停止日と、購入済みの読者へのサポートを分けて決めておきます。

契約が終わったあと、渡した原稿やデータはどうなりますか。

契約に返却・廃棄の条項があれば、それに従います。対象(複製やバックアップを含むか)、期限、完了の報告の方法を書いておくのが基本です。解除の場合は、民法545条が原状回復義務を定めていますが、出版物のように流通した作品は元に戻せないため、契約で具体的に決める方が確実です。

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