このページの要点
- 許諾する側に権限があるかを最初に確かめ、撮影者との契約を根拠に、表明・保証の条項を置く。
- 用途・媒体・期間・地域・使う主体の5つを限り、独占か非独占かを書く。範囲を書かない軸は制限がないと読まれやすい。
- 加工は、軽微な技術的調整、事前承諾が必要なもの、不可のものに分け、撮影者の人格権への配慮も書く。
- SNS転載・第三者提供・再配布は原則禁止。例外は委託先に限り、同等の義務を負わせる。データは範囲と削除の期限、報告を決める。
結論:写真・図版を預けて使わせるときは、権限・範囲・加工・転載・データの5点を先に決める
撮影した写真や、制作した図版・イラストを、他の事業者や団体に預けて使わせる契約は、「利用許諾書」や「写真利用許諾契約書」という名前で結ばれます。預ける側からすると、渡したいのは「この目的で、この範囲で使う権利」だけです。ところが、契約書の書き方が粗いと、データを受け取った相手が、別の媒体に載せたり、SNSに転載したり、加工して別の資料に使ったり、さらに別の会社に渡したりしても、止める根拠が契約の中に見つからない、という状態になります。このページでは、写真・図版(地図や図表のような図形を含みます)の「二次利用」を許諾する契約書に、何を書くかを整理します。ここでいう二次利用とは、最初に撮影や制作を依頼した目的とは別の用途や別の相手に使うこと、または許諾を受けた者がさらに別の場面で使うことを指します。
先に結論を5点にまとめます。
- 許諾する権限があるかを先に確かめる。写真の著作権は、原則として撮影した人(著作者)に生まれます。撮影を依頼した側や、撮影を取りまとめた会社が、当然に自由な許諾権を持つわけではありません。契約書の中で、権限があることを表明させ、保証させます。
- 用途・媒体・期間・地域・使う主体を限り、独占か非独占かを明記する。「広報活動に関する一切の媒体」「期間の定めなく」のような広い書き方は、預ける側に不利に働きます。
- 加工の可否を、軽微な調整とそれ以外に分ける。トリミングや解像度の変更は認め、合成や文字の挿入や動画化は事前の承諾にする、という分け方が基本です。撮影者の人格権への配慮も書きます。
- SNSへの転載・第三者への提供・再配布を、原則禁止にする。例外は、印刷会社や制作会社など、目的を実現するために必要な委託先に限り、同じ義務を負わせる形にします。
- 原データ・バックアップの管理と、使い終わった後の削除・報告を決める。事故があったときの通知と、使えなくなったときの扱いも、同じ条項のまとまりで決めておきます。
どの媒体まで許すかという考え方は、紙・電子・音声のような媒体別の許諾のページ(媒体別の許諾)と共通します。権利をどう渡すかの全体像は契約の選び方に整理してあり、権利の保証と、第三者の権利を侵害したときの対応は保証と侵害対応で扱います。ここでは、預ける写真・図版に絞って、利用許諾書の書き方を見ていきます。なお、人の肖像に関する契約や、動画編集の素材のライセンスは、このページでは扱いません。
許諾する権限があるか:撮影者・外注先との関係を最初に確認する
写真は、著作権法10条1項8号に「写真の著作物」として例示されています。著作者は著作物を創作した人で、著作権は創作の時に、特別の手続を要せず発生します(17条2項)。ここで見落とされやすいのが、「撮影を依頼した人」や「撮影の取りまとめをした会社」と「撮影した人」が一致しない場面です。たとえば、ある事業者が撮影会社に撮影業務を頼み、撮影会社が外部のカメラマンに撮影を任せた場合、写真の著作権は、原則として実際に撮影した人(または、その人と契約関係にある側)にあります。取りまとめた会社が、そのカメラマンとの契約によって、第三者に利用を許諾する権限を得ている場合にだけ、利用許諾を出せる、という関係です。
利用許諾書を預ける側(許諾する側)が作るなら、冒頭の条項で、この権限の出どころを確認します。確認の仕方は、次の2段階です。
- 権利の帰属を確認する条項。写真の著作権が誰に帰属するか(撮影者か、撮影者から権利を取得した者か)、著作者人格権は誰が持つかを、当事者が確認する旨を置きます。著作者人格権は譲渡できません(59条)。そのため、著作権の帰属先が変わっても人格権は著作者に残り、許諾を受ける側が安心して使うには、著作者が人格権を行使しない旨の合意が別途必要になります。
- 許諾権限があることの表明・保証の条項。許諾する側が、撮影者との契約に基づいて、この契約で定める範囲の許諾をする権限を適法かつ有効に持っていること、この許諾が第三者の権利を侵害しないことを、契約の締結時点で表明し、保証します。
確認の問いと理由許諾する側が、契約書を作る前に手元で確かめる問い
撮影者は、社内の担当者か、外部のカメラマンか。
社内の従業員が職務として撮影した写真は、会社が著作者となる場合があります(職務著作は著作権法15条の要件を満たす必要があり、個別に確認が必要です)。外部の人であれば、撮影者との契約書が権限の根拠になります。
撮影者との契約に、第三者への利用許諾を認める条項はあるか。
撮影者が許諾を認めていないのに、取りまとめた側が第三者に許諾すると、許諾の根拠がなくなります。再許諾の可否、および許諾できる用途の範囲が、撮影者との契約の側で決まっていることがあります。
写真に写っている人や、撮影した物・場所に、別の権利はないか。
写り込んだ人の肖像に関する権利や、被写体になった物・施設に関する条件は、著作権とは別の問題です。許諾書で許す範囲が、写った人の同意や撮影場所の条件の範囲を超えていないかを確かめます。
撮影者は、人格権を行使しない旨の合意をしているか。
同一性保持権や氏名表示権は、撮影者に残ります。許諾を受ける側が加工や掲載をするときに、撮影者から異議を述べられないよう、不行使の合意を取っておくことが多いです。
この4つの問いは、許諾書の「表明保証」の中身を決めるための確認です。答えが曖昧なまま「権限があることを保証する」と書くと、保証違反のリスクを許諾する側が背負うことになります。
許諾を受ける側にとっても、同じ確認が重要です。許諾を受けた者は、その許諾に係る利用方法と条件の範囲内でだけ、著作物を利用できます(著作権法63条2項)。許諾する側に権限がなかった場合、許諾を受けたつもりで使った行為が、本来の著作権者との関係では権利侵害になるおそれがあります。権限の確認は、許諾する側のためだけでなく、双方のための条項です。保証が事実に反したときの責任の分け方は、権利の保証と侵害対応で詳しく扱います。
独占か非独占か、用途・媒体・期間・地域・使う主体の書き方
権限の確認の次は、何を、どの範囲で許すかです。写真・図版の利用許諾書では、次の5つの軸で範囲を決めます。
写真・図版の許諾範囲を決める5つの軸
1用途
何のために使うか。「自社の会社案内の制作のため」のように目的を限る。
書かないと「広報活動に関連する一切の目的」のように広く書くと、目的外の使用を止める根拠が薄くなる。
2媒体
印刷物、ウェブサイト、SNS、動画、広告配信など、どの媒体に載せてよいか。
書かないと媒体を「その他一切」と書くと、新しい媒体への転用がすべて許された形になる。
3期間
いつからいつまで使えるか。終了後の扱い(在庫の印刷物、公開済みのページ)も含める。
書かないと「期間の定めなく存続」と書くと、預ける側から終わりの時期が決められなくなる。
4地域
国内に限るか、海外での公開を含むか。ウェブサイトは国境を越えて見られるため、実際の配信先で決める。
書かないと「全世界」と書くと、海外の事業者への転用が許されたと読まれやすい。
5使う主体
許諾を受けた本人だけか、グループ会社や委託先の利用を含めるか。
書かないと主体を書かないと、関連会社や取引先が使ってよいのかが分からない。
5つの軸のうち、一つでも抜けていると、その軸は「制限がない」と読まれやすくなります。預ける側は、軸ごとに、書いておくことで守れる範囲を確認します。
次に、独占か非独占かです。独占的な許諾とは、許諾を受けた者以外の第三者に、同じ範囲の許諾をしない約束を伴う許諾です。著作権法は、出版権(79条から88条)を除いて、独占的な利用権を登録して第三者に主張できるような制度を置いていません。そのため、写真や図版の独占的な許諾は、契約書の約束として成り立つ関係であり、約束を守る義務を負うのは許諾する側です。
写真・図版の許諾:独占と非独占の比べ方
| 項目 | 非独占の許諾 | 独占的な許諾 |
|---|---|---|
| 許諾する側の自由 | 同じ写真を、他の相手にも許諾できる。 | 同じ範囲の許諾を他の相手にはしない約束になる。自分で使えるかは書き分ける。 |
| 許諾料の水準 | 複数の相手に許諾できるため、一般に低めに設定される。 | 許諾する側の機会が狭まるため、一般に高めになる。 |
| 許諾を受ける側の安心 | 同じ写真が他でも使われることを防げない。 | 範囲内では他に使われない約束を得られる。 |
| 書いておくべきこと | 他の相手への許諾を妨げない旨。 | 独占の範囲(用途・地域・期間)と、許諾する側が自分で使う権利を残すかどうか。 |
独占的な許諾にするときは、「独占」の範囲を、用途・媒体・期間・地域の組合せで限ります。範囲を限らずに「独占的に許諾する」とだけ書くと、許諾する側が、自分の事業のために同じ写真を使うことも、できなくなる読み方が生じます。許諾する側が自己利用の権利を残すなら、そのことを明記します。
許諾を受けた者が、その利用権を第三者に譲ることは、著作権者の承諾を得ない限りできません(63条3項)。また、許諾を受けた者は、後で写真の著作権が別の人に移った場合でも、許諾の効力を新しい著作権者に主張できます(63条の2)。写真の著作権が撮影者から別の会社に移る可能性があるときは、この条文があることを前提に、許諾の期間と条件を決めます。
書き方の例(一般的な例) 許諾範囲の書き方
用途と媒体
理由用途を一つの目的に限ると、別の用途に使いたいときに、あらためて許諾を取る必要が生じ、そのたびに条件を決め直せる。
期間
理由終わりの時期を決めておけば、許諾を終わらせる手段を、契約解除という重い方法だけに頼らずに済む。
使う主体
理由関係会社を丸ごと含めると、使う主体の範囲が追えなくなる。委託先に絞り、同じ義務を負わせて責任の所在を明確にする。
加工・トリミング・文字入れ:翻案と同一性保持権をどう書き分けるか
写真や図版は、受け取った側が、そのまま載せるとは限りません。紙面のサイズに合わせたトリミング、解像度の変更、色味の調整、文字や枠の重ね、複数の写真の合成、動画化などの加工をする場面が多くあります。加工に関しては、2つの権利が関わります。
- 翻案権(27条)。著作物を翻訳し、編曲し、変形し、脚色し、映画化し、その他翻案する権利です。写真に大きな変更を加えて新しい表現を作ることは、この権利に関わります。写真を許諾する際の「利用」に、翻案までが含まれるのか、含まれないのかを書かないと、含まれる読み方も含まれない読み方も生じ得ます。
- 同一性保持権(20条1項)。著作者は、著作物とその題号の同一性を保持する権利を持ち、その意に反して変更、切除その他の改変を受けません。ただし、著作物の性質や利用の目的・態様に照らしやむを得ないと認められる改変には、この権利は及びません(20条2項4号)。どこまでが「やむを得ない」改変かは、個別の事情で判断されるため、契約で扱いを決めておくと、争いを減らせます。
契約書での整理の基本は、加工を3段階に分けることです。
加工の許可の度合い
◀ 許可しやすい慎重に扱う ▶
軽微な技術的調整
媒体の仕様に合わせた最小限の調整。
- サイズの変更、解像度の変更、形式の変換
- 範囲内の利用として、事前の承諾は不要とする
表現に影響する加工
見え方を変えるが、素材の同一性は残る。
- トリミングの大幅な変更、色調の補正、文字や枠の重ね
- 事前に預ける側の承諾を得る(メールなど記録に残る形)
作り変えに近い加工
別の表現になる。
- 合成、切り抜きの流用、動画化、イラスト化
- 原則として許さない。必要なら別の許諾として、条件と対価を決める
軽微な調整と、それ以外の線引きを、具体例で書いておくと、現場が迷いません。「軽微」とだけ書くと、受け取る側が自分に都合のよい読み方をしやすくなります。
預ける側が撮影者本人でない場合、加工の制限は、撮影者の人格権を守るための条項でもあります。撮影者が持つ同一性保持権への配慮を、許諾書の中でも明記しておくと、許諾する側が、撮影者との関係で責任を問われるリスクを減らせます。反対に、許諾を受ける側にとっては、撮影者が人格権を行使しない旨の合意(不行使特約)を取得していることを、許諾する側に保証してもらうことが、安心して加工するための前提になります。
もう一つ、書き漏れやすいのが、氏名表示(クレジット)です。著作者には、著作物の公衆への提供・提示に際して、実名や変名を表示するか、表示しないかを決める権利があります(19条1項)。撮影者の名前を載せる場合は、表示の位置・書き方・省略できる場合を、許諾書の中で決めておくと、掲載のたびに確認する手間が減ります。未公表の写真を使わせるときは、公表の時期や方法も、公表権(18条)に関わるため、許諾の範囲として書いておきます。
条文例加工についての書き方の例
- 甲は、本件写真について、媒体の仕様に対応するための軽微なトリミング、解像度の変更、サイズの変更その他の技術的調整を行うことができる。
- 甲は、前項に定める調整を超えて、本件写真の内容または表現に変更を加えるときは、あらかじめ乙の承諾を得なければならない。承諾は、電磁的方法によることができる。
- 乙は、本件写真の撮影者が有する著作者人格権について、甲による本契約に基づく適法な利用の範囲内で行使しない旨の合意を、撮影者から得ていることを保証する。
- 本条は、撮影者が有する著作者人格権を害する行為を甲に許すものではない。
第3項は、許諾する側が撮影者から不行使の合意を得ている場合の書き方です。得ていないときは、保証を置かず、その合意を取得するまで加工を認めない形にします。
SNS転載・第三者への提供・再配布:公衆送信と委託先をどう扱うか
写真・図版の二次利用で、実際に問題が生じやすいのは、ここです。許諾を受けた者が、公式のSNSアカウントに写真を投稿する、ウェブサイトに掲載する、取引先に画像データを渡す、といった場面です。
ウェブサイトやSNSに写真を載せる行為は、著作権法上の公衆送信(23条1項。自動公衆送信の場合は送信可能化を含みます)に当たります。紙の印刷物への掲載(複製・21条)とは、別の権利に関わる行為です。そのため、「会社案内に使うことを許諾する」という書き方だけでは、SNSへの投稿が許可の範囲に入るのか、入らないのかが曖昧になります。許諾の範囲として、SNSやウェブサイトへの掲載を含めるなら、アカウントの種類、掲載の期間、掲載内容の削除の義務を決めます。含めないなら、禁止することを書きます。
第三者への提供も、同じように決めます。提供には、メールやオンラインストレージでのデータの受け渡し、画像の貸与、素材として他者がダウンロードできる状態にすることなどが含まれます。基本の考え方は、次のとおりです。
- 原則は禁止。許諾を受けた者は、写真・図版を第三者に提供、譲渡、貸与、公衆送信、再配布してはならない。
- 例外は、目的の遂行に必要な委託先に限る。印刷会社や制作会社に、必要な範囲でデータを渡すことは認める。
- 例外を認めるときは、同じ義務を課す。委託先に、契約と同等の利用制限と管理の義務を負わせ、その履行については、許諾を受けた者が責任を負う。
- 不特定多数が使える場所への登録は禁止。素材配布サイト、ストックフォトのサービス、画像を機械学習に利用するためのデータベースなどへの登録を、明確に禁止する。
書き方の例(一般的な例) 転載と第三者提供の書き方
SNSへの掲載
理由「広報目的」だけでは、SNSへの投稿が許可に入るかが分からない。掲載の場所と取下げの義務を書いておけば、終わらせるときの手順も決まる。
第三者への提供
理由例外のない禁止は、実務上守れない(印刷会社にデータを渡せない)。例外を設けて責任の所在を残す方が、実効性がある。
再配布・登録
理由再配布の禁止だけでは、データベースへの登録が再配布に当たるのか争いになり得る。登録先の種類を具体的に書いて、疑問の余地を減らす。
許諾を受ける側にとっても、利用の範囲が明確になることには利点があります。SNSの運用担当者が、契約の範囲を知らないまま写真を使い回すという事故は、契約書を社内で共有していないために起きることが多いです。許諾の範囲を一覧にして、担当者に配る運用も合わせて整えると、契約違反を防げます。許諾を受けた者が範囲外の利用を始めたときの対応の順序は、トラブルとよくある質問で扱います。
原データ・バックアップの管理と、使い終わった後の削除・報告
写真や図版が許諾の範囲内で使われているとしても、データそのものの管理が緩いと、外部に流出する危険があります。利用許諾書には、データの管理についての条項を置きます。
まず、「データ」の範囲を定義します。撮影時の元データ(RAWデータ)、現像・レタッチ後のデータ、トリミングや色調補正をしたデータ、書き出した縮小データ、バックアップやクラウドに保存されたデータ、そして写真を素材として作られた合成物や編集物を含めるかどうかを書きます。範囲を狭く書くと、バックアップや加工後のデータだけが削除の対象から外れることになります。
データの管理から削除までの流れ
- 受け取り預ける側が渡す形式と、受け取る担当者を決める。
- 保管保管場所、アクセスできる人の範囲、持ち出しの禁止を決める。
- 事故の通知漏えい、紛失、不正アクセスがあったとき、直ちに通知し、原因と再発防止策を報告する。
- 利用終了許諾の期間満了または解除で、新たな利用を止める。
- 削除と報告保有するデータをすべて削除または廃棄し、完了を書面で報告する。
削除の対象にバックアップと派生物が入っているか、削除の期限が決まっているか、報告が書面か(電磁的方法を含む)かを、条文で確認します。
管理の条項で決めておくとよいのは、次の点です。
- 保管の注意義務の水準(善良な管理者の注意を払って保管する、などの書き方)。
- アクセスを業務上必要な者に限ること、複製や持ち出しをしないこと。
- 委託先にデータを渡す場合に、同等の管理義務を課し、その責任を許諾を受けた者が負うこと。
- 情報事故(漏えい、滅失、毀損、不正アクセス)が生じたときの通知の方法と期限、被害拡大の防止措置。
- 情報事故で損害が生じたときの責任の分担。故意や重大な過失がある場合、責任の上限の外に置くことが多い。
- 保存期間は、別途書面で定めるか、契約の終了と同時に終わらせるか。
保存期間の扱いは、見落とされやすい点です。預ける側は、データを受け取った側が必要以上に長く保管することを望みません。他方、受け取る側には、会社案内の在庫が残っている間は、同じ版の写真データが手元に必要だ、という事情があります。保存期間は、あらかじめ書面で合意し、その期間を過ぎたら速やかに削除する、という形にします。印刷物の在庫の扱いは、終了・絶版・権利の戻し方のページと同じ考え方で整理できます。
使えなくなったとき:撮影者側の事情・権利関係の変化・契約の終了
契約を結んだときは使えると思っていた写真・図版が、後で使えなくなる場面があります。許諾書には、そうした場面の扱いも、書いておく価値があります。
確認の問いと理由使えなくなる場面と、その扱いを決める問い
撮影者との契約が終了したり、撮影者との間で争いが生じたりしたとき、許諾はどうなるか。
許諾する側が撮影者との契約を失うと、許諾の根拠が揺らぎます。許諾を受けた側が既に作った印刷物をどうするか、公開中のページをどうするかを、あらかじめ決めておきます。
許諾の権限がなかったことが後で分かったとき、誰がどう対応するか。
許諾を受けた側は、掲載の停止と回収を求められることがあります。停止の費用、許諾料の返還、第三者からの請求への対応を、保証条項と合わせて決めます。
写真の著作権が、第三者に移ったとき。
許諾を受けた者は、許諾の効力を新しい著作権者に主張できます(63条の2)。それでも、新しい著作権者との間で条件を変えたい事情が生じることがあるため、契約の中で、権利が移転する場合の通知を求める条項を置くことがあります。
許諾の範囲を超えて使われていることを、後から知ったとき。
範囲外の利用は、許諾の効力が及ばない利用になります。止めるために、利用停止、データの削除、許諾の解除の順に、どの手段が使えるかを契約の中に書いておくと、動きやすくなります。
どの場面でも、先に起きた事実を確認し、書面で通知し、期限を示して是正を求める、という順序が基本です。順序の考え方は、トラブル対応のページ(トラブルとよくある質問)でまとめています。
契約が終了した後の扱いは、期間満了の場合と、違反による解除の場合とで、分けて書くと混乱を避けられます。期間満了のときは、既に印刷された資料の配布を一定の期間認めるかどうか、ウェブサイトへの掲載を、いつまでに取り下げるかが論点です。解除のときは、直ちに新たな利用を止めるのが一般的で、在庫や公開中の媒体の扱いに、猶予を与えるかどうかが論点になります。いずれの場合も、データの削除と、その完了の報告は同じです。
署名前に確かめる項目と、起きがちなこと
写真・図版の利用許諾書に署名する前に、次の項目を一つずつ確かめます。許諾する側にも、許諾を受ける側にも共通する点検です。
署名前に確かめる項目
- 許諾する側の権限(撮影者との契約、権利の帰属)が、契約書の中で確認され、表明保証されているか。
- 用途・媒体・期間・地域・使う主体の5つが、すべて書かれているか。
- 独占か非独占かが明記され、独占のときは、許諾する側の自己利用の扱いも書かれているか。
- 加工が、軽微な調整、事前承諾が必要なもの、不可のものに分けられているか。
- 撮影者の人格権(同一性保持権、氏名表示権)の不行使の合意、またはクレジットの表示方法が書かれているか。
- SNSやウェブサイトへの掲載を認めるか否かが書かれ、認める場合は取下げの義務があるか。
- 第三者への提供の例外が、委託先に限られ、同等の義務を課す形になっているか。
- 素材配布サイト、ストックフォト、機械学習用データベースなどへの登録が禁止されているか。
- データの範囲(元データ、派生物、バックアップ)と、削除の期限、報告の方法が書かれているか。
- 使えなくなったとき(撮影者との契約の終了、権限の欠如、権利の移転)の扱いが書かれているか。
起きがちなこと
- 撮影を取りまとめた会社が、撮影者の許可を得ないまま「自社に権利がある」として許諾書を作り、後で撮影者から異議が出て、掲載の停止を求められる。
- 「広報活動に関連する一切の媒体」と書いたために、SNS、広告配信、取引先向けの資料まで許可の範囲に入ると主張され、止める根拠が見つからない。
- 「期間の定めなく存続」と書いたことで、預ける側が終わらせる手段を失う。
- 加工の条項がなく、受け取った側が合成や文字の追加を行い、撮影者の意に反する形で公開されてしまう。
- 委託先の制作会社が、納品後も元データを保管し続けていたことが、後から判明する。
- 契約が終わった後も、古いウェブページや資料に写真が残り、削除の完了報告がないまま放置される。
- 担当者の異動で、許諾の範囲が引き継がれず、範囲外の媒体に掲載される。
よくあるご質問
写真の著作権は、撮影を依頼した側にありますか、撮影した人にありますか。
原則として、撮影した人(著作者)に生まれます(著作権法17条)。撮影を依頼しただけでは、著作権は依頼した側に移りません。依頼した側が自由に使うには、撮影者から著作権の譲渡を受けるか、利用の許諾を受ける必要があります。社内の従業員が職務として撮影し、会社の名義で公表したときは、会社が著作者になる場合がありますが、要件があるため個別の確認が必要です。
写真の利用許諾書に、独占的に許諾すると書くと、何が変わりますか。
許諾する側が、同じ範囲の許諾を他の相手にはしない約束をすることになります。著作権法には、出版権を除いて、独占的な利用権を登録して第三者に主張できる制度がないため、独占の効果は契約の約束として生じます。独占の範囲を用途・地域・期間で限り、許諾する側が自分でその写真を使えるかどうかも、あわせて書いておきます。
許諾を受けた写真を、SNSに投稿してもよいですか。
許諾の範囲に含まれていれば可能です。ウェブサイトやSNSへの掲載は公衆送信(著作権法23条1項)に当たり、紙の印刷物とは別の利用です。許諾書にSNSへの掲載を含める旨が書かれているか、掲載できるアカウントと期間が決められているかを確認します。書かれていなければ、事前に確認を取るのが安全です。
写真のトリミングや色の補正は、許諾の範囲に入りますか。
契約の書き方によります。サイズ変更や解像度の変更のような軽微な技術的調整は範囲内とし、それ以外の加工は事前の承諾を要する、と書くのが一般的です。著作者には同一性保持権(20条1項)がありますが、著作物の性質や利用の目的・態様に照らしやむを得ない改変には及びません(20条2項4号)。どこまでが該当するかは個別の事情で変わるため、契約で線引きを書いておきます。
契約が終わった後、写真のデータはどうすればよいですか。
許諾を受けた側が、保有するデータ(元データ、加工後のデータ、バックアップを含む)を削除または廃棄し、完了を相手に報告する、という形が一般的です。印刷物の在庫やウェブサイトの公開分については、いつまでに取り下げるか、一定の猶予期間を置くかを、契約で決めておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、契約の内容や取引の実態によって異なることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 文化庁